問い合わせについて、今の状況を整理する

「もっと新規の問い合わせを増やしたい」 経営者や広報担当者がそう考えたとき、真っ先に頭に浮かぶのは「露出を増やすこと」かもしれません。
広告を出す、SNSを毎日更新する、あるいはホームページをデザイン性の高いものにリニューアルする。
もちろん、これらは一つの手段ではありますが、その前に一度、今の状況を整理してみる必要があります。
今、貴社に届いている依頼や問い合わせは、どのような経路で、どのような期待を持って届いているでしょうか。
もし、現在の依頼のほとんどが「既存顧客からの紹介」や「社長自身の個人的なつながり」によるものだとしたら、それは非常に素晴らしい信頼の証です。
しかし、そこには一つの落とし穴があります。それは、依頼の源泉が「会社の仕組み」ではなく「個人の人間力」に依存しているという点です。
この状態のまま、焦ってWebサイトに多額の投資をしても、期待するような「新規」はなかなか増えません。
なぜなら、紹介であれば紹介者が補足してくれていた「この会社の信頼できる理由」を、Webサイトが代わりに説明できていないからです。
まずは、現状の問い合わせが「属人的なものか、仕組みによるものか」を振り返ること。
こういったことが、WEB施策のスタートラインになります。
ホームページで集客ができている会社に見られる傾向
世の中には、派手な広告を打っているわけではないのに、安定して質の高い問い合わせを獲得している中小企業が存在します。
そうした会社を注意深く観察すると、ある共通点に気づきます。
それは「派手な宣伝」ではなく依頼を検討している人への「判断材料の提示」がとても丁寧であるという点です。
読み手(見込み客)は、問い合わせというアクションを起こす前に、心の中で必ず「葛藤」を抱えています。
「この会社は、自分たちの業界のことを本当に分かっているだろうか」 「見積もりを頼んだら、しつこく営業されるのではないか」 「今の外注先よりも、本当に良くなるのだろうか」
こうした不安を抱えている人に対し、一方的に「わが社の強みはこれです!」と叫んでも、心には届きません。
集客ができている会社は、こうした読み手の「自問自答」を先回りし、答え合わせができる情報を置いています。
たとえば、実績紹介でも、単に「〇〇株式会社様」と書くだけではなく、「どのような課題があり、なぜ自社が選ばれ、結果として担当者の負担がどう減ったのか」というプロセスが書かれていれば、読み手は具体的な課題や場面をイメージすることができます。
依頼につながる瞬間は、読み手が「ここなら自分の状況を理解してくれそうだ」と思えた時に、依頼へとアクションがつながるのだと思います。
新規顧客開拓がうまく進みにくい場面
一方で、情報発信を頑張っているつもりなのに、なかなか成果につながらない、あるいは最初の一歩が重くて踏み出せないという場面もあります。
ここで陥りがちなのが、「個人の努力不足」や「センスの問題」にしてしまうことです。
しかし、本当の原因はもっと構造的な部分にあります。
自社アピールでよく見受けられるのが、「何でもできます」という方向での表現の罠です。
小規模な組織であればあるほど、機会損失を恐れてターゲットを絞り込むことに抵抗を感じてしまうかもしれません。
しかし、インターネットで膨大な情報がいきかう世界で「何でもできる」は「何も得意ではない」と同じ意味に捉えられてしまいます。
読み手は「自分の特定の悩み」を解決してくれる専門家を探しているからです。
また、広報の判断が属人化しているケースも、新規開拓を阻みます。
「社長に確認しないと何もアップできない」「担当者が変わったら更新が止まった」という状況では、情報の鮮度が落ち、閲覧者に「この会社、今は動いているのだろうか?」という不要な不安を与えてしまいます。
これらの問題は、気合や根性で解決するものではありません。
「誰に、何を、どの程度まで開示するのか」という社内基準がないことが、ブレーキの本質的な正体です。
情報発信を通じてできることの範囲
ここで、情報発信(ブログやホームページ)に対する期待値を、一度適正なサイズに調整してみましょう。
多くの人が「ブログを書けば、それだけで契約が決まる」という幻想を抱き、その重圧に負けて筆が止まってしまいます。
しかし、ブログの本来の役割は「営業の完結」ではなく、「信頼の予習」です。
本来、営業マンが対面で時間をかけて説明していた「自社の考え方」や「他社との違い」を、読み手があらかじめWeb上で摂取してくれている状態。これが理想的な情報発信の姿です。
- できること: 問い合わせ前の不安を取り除く、価値観の合う顧客をスクリーニングする、商談時の説明時間を短縮する。
- できないこと: 興味が全くない人を説得する、質の悪い商品・サービスを良く見せかける。
この「できること」の範囲に集中すれば、書くべき内容は自然と絞られてきます。
無理に明るく振る舞ったり、最新のトレンドを追ったりする必要はありません。
ただ、誠実に「私たちが提供できる判断材料」を整理しておくことのほうが大切です。
集客、次の一手を考えるための視点
もし、今の状況から一歩踏み出し、問い合わせが増える土壌を作りたいと感じていましたら、以下の視点で自社を眺めてみるのもいいかもしれません。
視点1:今の顧客が「決めた」本当の理由は何か?
アンケートやヒアリングを通じて、自社が選ばれた「決定打」を探ってみてください。
それはあなたが自慢したい技術ではなく、「返信が早かったから」「担当者の言葉が分かりやすかったから」といった、意外と泥臭い理由かもしれません。
その理由こそが、次の新規顧客が求めている「判断材料」です。
視点2:問い合わせを迷っている人が、最後に「確認したい」ことは何か?
たとえば、費用の目安、進行のスケジュール、あるいは「断っても大丈夫か」という安心感。
これらがサイトの目立つ場所に整理されているだけで、問い合わせのハードルは劇的に下がります。
正解は一つではありませんし、一朝一夕で結果が出るものでもありません。
しかし、「判断材料を渡す」という視点を持つだけで、貴社の情報発信は「義務」から「顧客への親切心」へと変わっていくはずです。
まずは、今日一日の業務の中で、お客様から聞かれた「質問」を一つメモすることから始めてみてはいかがでしょうか。